タンクローリーの歴史

馬車からタンクローリーへ

そもそも、現在イメージするタンクローリーといえばタンク架装を持つ自動車ですが、当初はタンクワゴン(tank wagon)を馬に引かせていました(1880年代)。3頭の馬で、900ガロン程度を運ぶことができたようです。

1905年、イギリスの石油会社であるAnglo American(アングロアメリカン)は、タンクローリーによる石油製品の輸送を開始します。このとき使われていた車両は、同じくイギリスのThornycroft(ソニークロフト)が製造していまいした。一部ではまだ馬の牽引するタンクワゴンも使用されていましたが、徐々にタンクローリーに置き換わっていきました。

日本における初期のタンクローリー

日本における初期のタンクローリーといえば、1930年に誕生した犬塚製作所のタンクローリーです。当時のタンクローリーは円筒形の燃料タンクをリベットで制作していましたが、犬塚製作所は形状を楕円型にし、リベットではなく溶接によってタンクを製造しました。これにより、搭載効率の向上が図られました。

下の画像が1930年製の犬塚製作所のタンクローリーです。ガソリンを積載するタンクの形状は、現在と同じように楕円形をしていることがわかります。

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1930年製犬塚製作所のタンクローリー(歴史に残る働くクルマたち特装車より)

犬塚製作所は、セメントを運搬するためのタンクローリー(バラ車)の製造においても日本のフロントランナーです。当時、セメントは袋詰めされたものがトラックで運搬されていましたが、粉粒体(バラセメント)のまま運ぶことができれば作業効率を向上することができます。犬塚製作所が開発したスクリュー式バラセメント運搬車は、タンクに収容したバラセメントを、スクリューコンベアで排出する機構が設けられています。このタンクローリーは、日本におけるバラセメント運搬車の一号機となりました。

粉粒体運搬車の排出機構は、スクリューコンベア式以外にエアスライド式や空気圧送式が存在しますが、これらのタンクローリーも犬塚製作所が日本で初めて製造しています(エアスライド式は1956年、空気圧送式は1960年)。

1979年に誕生した極東開発工業のアルミ製タンクローリーも忘れてはいけません。当時はSS(いわゆる鉄板)製のタンクが主流でしたが、アルミを使用することで軽量化し、積載量を増やすことに成功しました。これ以降、アルミタンクが市場の標準となっていきます。ちなみに、日本でアルミ製タンクローリーを初めて完成させたのは昭和飛行機工業で、1963年に6,000Lのアルミ製タンクローリーを製造しています。

薬品や高圧ガスを運ぶタンクローリー

石油以外の製品を搭載するためのタンクローリーとしては、1953年の濃硫酸輸送用タンクローリーがあります。新明和工業によって製造されたこの車両は、エアーコンプレッサーによる圧送を行いタンク下部後方から濃硫酸を排出することができます。詳細は不明ですが、何らかの素材でタンク内部をライニング処理して耐食性を確保していたと思われます。

1970年、海外から輸入したLNGを貯蔵する一次基地が稼働を始めます。これに伴い、各地のサテライト基地へLNGを運搬するための輸送手段として、タンクローリーが使用されることになりました。日本車輌製造は、国産初となるLNGタンクローリーを開発します。1988年には、需要拡大に伴って国産初のLNG用タンクトレーラーも制作しています。

1979年、東急車輛製造はFRP製のタンクローリーを製造します。FRPとはfiber-reinforced plastics(繊維強化プラスチック)の略称で、弾性率が高く頑丈なガラス繊維と弾性率は低いが軽量なプラスチックを合わせた複合材料です。軽量でありながら高い耐食性を持ちます。FRPをタンク素材に採用することで、従来使用されていたゴムライニングされた鉄タンクよりも高い耐食性を確保することができるだけでなく、タンクを軽量化できるため積載量も増加させることができました。

1989年には、東急車輛製造による日本初のテフロンライニングタンクローリー(TC5-664型)が誕生します。このタンクローリーはEL混酸の運搬に使用されました。EL混酸とは、電子部品のエッチングや洗浄に使用する混酸のことです。極微量であっても不純物や金属イオンの混入があっていはけません。そこで、タンク内面および配管内面にテフロン皮膜を施したタンクローリーが製造されました。テフロン(正式にはPTEF, polytetrafluoroethylene, ポリテトラフルオロエチレン)はフライパンの焦げ付き防止に使われているように耐熱性が高いのはもちろんですが、高い耐食性があることでも知られています。このタンク自体はステンレス鋼SUS304ででいていますが、内面がテフロンライニングされたことで、EL混酸のようにデリケートで腐食性の高い液体も安全に運搬できるようになりました。

参考文献

  • 日本自動車車体工業会特装部会技術委員会(2008)歴史に残る働くクルマたち 特装車, 日本自動車車体工業会.
  • 昭和飛行機工業株式会社編(1977)昭和飛行機四十年史, 昭和飛行機工業.
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